037529 ランダム
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Midnight waltz Cafe 

Red Moon -第3幕-

                                             
 ・・・その頃、雪絵は、「涼ったら、私のことをほっといて、おじさんと話してばっかり・・」と怒りながら、一人でホテルの外に出ていた。外を歩いていると、道の真ん中に何かがいた。
 「・・もしかして、あれって、ツチノコ・・・?」     
雪絵がそう思った時、その何かは逃げ出した。       
 「えっ、待って!」                   
 雪絵は、その何かを捕まえるために追いかけたのだった。  

 1時間後・・・                   
 「ここ、どこだろう・・?」 お約束通り、道に迷っていた・・・        
                             


           第3幕   狂宴の舞台


                              
 「やばい、宝石をそのままにしてきた!」         
 涼は地下室での出来事を思い出して、急いで戻った。もちろん地下室には誰もいない・・                
 「しまった。」                     
  涼はそう叫びながら床を強く叩く。            
 (・・いや、待てよ・・神尾がそう遠く言っているとはかぎらないな。追いかけてみるか・・・)            
  そして涼は、あてもなく走り出した・・          
                              
  ・・その頃雪絵は、まだ道に迷っていた・・        
                              
 ホテル及びその周辺を捜し回ったが、涼は、真理と宝石を見つける事はできなかった。そのため、おじに事情を説明することが、大切だろうと考え、おじの所へと向かった。  
                              
 ・・その頃雪絵は、いつの間にか森の中を彷徨っていた・・ 
  
                             
 ホテルに帰り、涼はおじに事情のいくつか・・CROSSのこと、『紅』が無くなった事など(マリー=ローズの事は話さなかったのだが・・)・・を、話した。           
涼の話を聞いた龍二は、愕然とする・・・しかし、愕然としながらも、龍二は語り始めた。               
 「あの宝石は、わしの親友のツカサからもらった物でな。」 
 「おじさん、その・・ツカサっていう人・・十文字司という人のこと?」                       
 「ああ、そうだが・・どうして知っているんだ。」     
 「さっき言ったCROSSとかいうやつからの・・予告状に書いていたから、そうかなと思っただけだよ。」       
 「・・・・・・・」                   
 「どうしたの、おじさん。」               
 「いや・・何で司から宝石をもらった事を知っているんだろう・・と思ってな。」                   
 (そういえば、確かに変だよな・・)           
 涼は、そう思いながら歩き出した。            
 「あれ、そういえば雪絵は・・」              
 雪絵がいない事に気付き、涼は探しにでかけた。      
                              
 ・・・その頃雪絵は、森の中を歩いていた・・        
 「本当にここはどこなんだろう。」            
 そうして歩いている内に古い教会のような建物を見つけた。 
 「あのー、すいません。誰かいらっしゃいますか。道に迷っちゃったんですけど・・」                 
 その雪絵の呼びかけに返事はなかった。しかし雪絵は、あきらめ(?)、探索を開始した。              
 その建物は、本当に教会のようだ。しかし、誰一人と中にはいなかった。それどころか、人の住んでいた気配さえも無いような場所だった。                     
 「どうしよう・・本当に誰もいないみたい・・あれはなにかしら?」                         
 それでもあきらめずに雪絵は、探索を続けた。すると、少しきれいな部屋が一つあった。その部屋に入ってみると、中には人が住んでいた気配があった。部屋を見渡すと一枚の写真が飾られてあった。その写真を見た時、雪絵は自分の目を疑った。 
 「この人って・・・」                  
雪絵は、その写真を手に取って見ようとしたが、ショックの余り写真を落としてしまった。落ちた写真は、裏向きとなる。その裏側には何か文字が書かれてあった。その文字を見た時、雪絵は、さっきよりももっと大きなショックを受けたのだった。
 「う、うそ・・嘘だよね・・。どうして、こんなわけないじゃない。」                     
                              
 「ーーーーーーーーーーーーーーーー!」         
 古びた教会に、雪絵の涙と叫びがこだまする。      ・
  
                            
 その頃楓と真琴は、ちゃんと仕事(ドラマの撮影)をやっていたのだった・・                     
 「そろそろ、暗くなるからシーン88の準備をしてくれ。」 
 監督の声がとぶ。                    
 「真琴さん、休憩しましょうか。」            
楓が真琴に声をかけて、飲み物を取りに行った。      
 「楓さん、ありがとう。」                
 「柳さん、読み合わせやりませんか。」          
真琴の声に続き、少年の声が続いた。           
 「朝斗君。」                      
 この少年は柏木朝斗といって、真琴と共演している高校生である。(ちなみに涼達と同じ歳なのだが、そうは見えないぐらい幼い感じがする・・と、楓は思っている。)        
 「茜お姉ちゃん。」                   
 「正樹、こっちに来ちゃだめーーーーー!」        
 楓が、二人分の飲み物を用意するために席を外している間に、セリフの読み合わせが始まっていた。(このドラマの中では、真琴は大野茜、朝斗は大野正樹という役名で、二人は姉弟ということになっている。)                  
 「お二人ともどうぞ。」                 
楓は持っていたジュースを二人に渡した。         
 「ありがとう、楓さん。」                
 「ありがとう、高山さん。」               
ジュースを飲みながら朝斗は、楓に質問する。       
 「ねえ、高山さん。この脚本書いたのって高山さんだよね。 
 「そうですが、それが何か?」              
 「たいしたことじゃないんだけど、僕と柳さんの役の姉弟って、誰かモデルがいるのかな、と思ってね。」       
 「・・いえ、特にいませんけど。」            
 「そうなんだ、この二人がすごくリアルだったから誰かモデルがいるのかなと思っただけなんだけど・・あ、気にさわったら、ごめんなさい。」                   
 「いえ、そんなことはないですよ、お気になさらずに・・」 
 「そう、良かった。・・じゃあそろそろ僕は行くんで、また後でね。」                       
 そういって、朝斗は去っていった。            
 「さて、そろそろ私たちも仕事に・・」          
 楓は、真琴に声をかけたが、真琴に反応はなかった。    
 「真琴さん、どうしたんですか。」            
 「楓さん、また鏡に文字が出てきたの。」         
 「その鏡は、確か・・」                 
 真琴の持っている鏡は『月の鏡』と呼ばれるもので、その名の通り月の光を浴びると、文字が浮かび上がってくる仕掛けになっていた。昨年の七月、この鏡に文字が出てきたおかげ(?)で、水晶の秘密が分かったのだが・・            
  「ううん、違うの。」                  
  「違うって、どういうことですか・・」          
  「出てきた文字が違うの。」               
  「・・・!」                      
 楓はそれを聞き、真琴から鏡を見せてもらった。      
                              

   ―マノスイショウハホシノヒカリヲアビタカラヘトミチビク―
                              
  「魔の水晶は、星の光を浴び宝へと導く・・?」      
  楓は鏡に書かれてある文字を読んでみた。         
  
 (・・どういうことなんだ、これは・・ もしかして・・・『今ここのいるのは本当にドラマの撮影のためだけかしら?』  なるほどね・・彼女が言っていたのはこの事か・・・)  
  「真琴さん、鏡を借りていきます。」           
 そういって楓は、走り出した。              
  「楓さん・・仕方ないわね、本当に・・・」        
  真琴は、あきれながらも撮影の場所へと向かった。     
     

                         
           ―そして、夜へと墜ちていった・・・

                              
 「雪絵、どこだ!」                   
涼は、夜になったのに、まだ雪絵を見つけられずにいた。  
 「ちきしょう、真理だけでなく、雪絵もみつからないのか、まいったなあ。・・・あとこの島で探してないのは・・」   
涼は地図を見ながら考える。               
 「この先にある、岬に向かっての森か・・・まずいなあ、ここって確か『帰らずの森』とかいうやつじゃなかったっけ。ま、そんな事で諦めるわけにはいかないし、行くとするか。」   
そして、涼は森の中へと入っていった。          
                              
 その頃雪絵は、写真を持ってあてもなく歩いていた。    
                              
 真理は、『レッドムーン』を持って岬へと辿り着いていた。 
 「ここまでくれば大丈夫ね・・。」            
 「それはどうでしょうか・・」               
 真理の後ろから声がかけられた。             
 「誰?」                        
現れたのは、牧師のような恰好をした一人の男だった。   
 「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私は、クロス(CROSS)といいます。マリー=ローズさん。」     
 「どうして、私の名前を知っているの?」         
 「それは、残念ながら言えません。」           
 「・・それで、私に何の用があるの。クロスさん。」    
 「あなたの持つ水晶を渡していただきたい。」       
 「なにを言っているの、私は水晶なんて知らないわ。」   
 「とぼけるのは構いませんが、調べはついていますから。」  
 「調べ?」                       
 「ええ、半年前にあなたは、ある洋館で二つの水晶を壊していることとかね・・」                   
 「どうして、それを・・・」               
 「気付きませんでしたか? あの時、私もあの場所にいたんですよ。その証拠に・・」                 
そう言ってクロスは、何かを取りだした。         
それは、『誘惑』と『虹』の水晶だった。しかも、ちゃんと水晶の形をしていた。                   
 「うそ、ちゃんと壊したはずなのに・・・」        
 「もちろん、これは本物です。あなたが壊したのは偽物だったのですよ。」                      
 「いつ、すりかえたの・・」                
 「あなたが爆薬を仕掛けて、洋館を出てからですよ。」   
 「そう、確かにそれは不可能ではないわね。」        
 「分かっていただけましたか。」             
 「それで、あなたは水晶をどうするつもりなの。」     
 「・・それは、秘密ですが、あえて言うなら、あなたのように壊したりはしませんよ。」                
 「そう、それじゃあ渡せないわ。」            
真理は、そう言って拳銃を取り出して、クロスへと向けた。 
 「・・どうやら、誤解していますね。」          
 「どういうこと・・」                  
 「説明したいところですが、まだキャストも揃っていませんしね・・・・」                      
 「キャスト? いったいあなたは何者なの?」       
真理が問いただそうとした時、真理の持っていた紅い水晶が光り出した・・                      
                              
 「あの輝きは・・もしかして神尾か。」 涼は、そう思い光っている場所へと向かった。       
                              
 「あそこにいけば、きっと・・・」            
同様に、同じ森の中にいた雪絵も光の方向を目指した。   
                              
 「あれが、魔の水晶の輝きか?」             
  そして楓も、紅い光を見てその場所へと走った。      
 「どうやら、あなたのおかげでキャストが揃いそうですね。」
  クロスは、赤く光る水晶を見ながらつぶやいた。      
 「・・どうして水晶が光るの?」             
 真理は不思議そうに水晶を見つめた。           
 「あなたは知らなかったのでしょうが、その水晶は星の光を浴びて光るんですよ。」                  
 クロスにそう言われて、真理は空を見上げた。空には満天の星が輝いている。                     
 「太陽、月、星・・この三つの光が、それぞれの水晶を輝かせているのですよ。」                   
 そう言いながら、クロスも空を見上げていた。       
                              
 「神尾、ここにいたのか。」               
 そう言いながら、涼が岬へと到着した。          
 「滝河君・・」                     
 「あと一人か・・」                   
 涼を見て、クロスはそうつぶやいた。           
 「神尾、お前の隣にいるのは誰だよ?」          
真理の横にいるクロスに気付き、涼は神尾に聞いてみた。  
 「また説明しないといけないようですね。」        
クロスがそう言った時、                 
 「その必要はありませんよ。クロスさん。いえ、辰巳・・・十文字秀明さん!」                  
 楓も到着した。                     
 「クロス・・・お前がクロスっていうやつか、よくもおじさんのホテルに危ない仕掛けをしてくれたな。」        
 「仕掛け?何のことですか?」              
 「ホテルの彫像を倒れるように仕掛けていただろう!」   
 「私は、確かにホテルの彫像に予告状は張りましたが、そんな仕掛けは何もしていませんよ。」             
 「・・じゃあ、いったい誰が・・」            
 「少なくとも私ではありません。」 どうやらその事に関しては、クロスは無実のようだ。    
 「涼君、お話は済みましたか。」             
 楓は、真面目な顔をして聞いてきた。           
 「あ、ああ。終わったけど・・楓さんあの人のことを知っているの?」                        
 「ええ、忘れられないぐらいにね・・」          
 「・・五年ぶりですか、あなた達が高校三年生の時以来ですから・・」                        
 クロス・・秀明は、楓を見ながらそう言った。       
 「あなたは、父親の水晶をすべて見つける事ができたのですね。」                          
 「父親の・・? どういう事だよ、楓さん。」       
 楓の言葉に涼は疑問をぶつけた。             
 「・・・・・・」                    
 秀明は沈黙していた。                  
 「CROSS、十文字・・・そっか、そういうことか。」  
 涼は何かひらめいたようだ。               
 「あの予告状に書いてあった、十文字司ってのは、あんたの父さんてわけか。」                    
 「その通りだよ、二代目怪盗チェリー君。」        
 「なんで、俺が、二代目ってことを知っているんだ。」   
 「当然なのですよ、涼君。なぜなら、私と桜さんが怪盗チェリーとして、秀明さんと会っているのですから、五年前にね。」 
 「楓さん、五年前にいったい何があったんだよ!」     
  その涼の叫びをかき消すように、ある女性の声が響きわたった。                           
 

                             
 「その答えは、私から説明するわ。もちろんいいでしょ・・ 秀明さん、 そして・・・楓君。」              



                              
  「・・えっ! 嘘だろ、なんで・・」           
 涼は絶句してしまった。なぜなら、その女性が、楓の幼なじみであり、涼の姉である…滝河桜だったからである。    
    



        ―舞踏会の楽曲を、桜吹雪が彩っていく・・・




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